PACKAGING NOTES #004

同じ物性名、異なる数値 — 二つの材料データシートは比較できるのか

下書き — 技術内容を確認中です。
Packaging Notes #004 — 同じ物性名、異なる数値 — 二つの材料データシートは比較できるのか
要点

単位と試験方法が一致するまでは比較できません。496 kgf/cm² は約 48.6 MPa ですから、496 と記載した供給元が 27 と記載した供給元より 18 倍強いわけではありません。単位の違いであって、性能の違いではないのです。さらに ASTM D638 と ISO 527 は試験片も試験速度も異なるため、同一材料でも異なる数値が出ます。JIS のフィルム試験はそのどちらでもありません。試験方法を伴わない数値は、単なる数値です。

技術的な課題

データシートが二枚。同じ物性。一方は 27 MPa、もう一方は 496。どちらの材料が強いのか。問いの立て方が違います。

熱成形トレー材料の供給元 TDS を四件、並べて確認しました。同じ引張強さという物性が、四通りの方法で報告されていました。ベトナムの製造元からは kgf/cm²、米国の樹脂メーカーからは ASTM に基づく MPa、中国からは ISO 527 に基づく MPa、日本からは JIS K7127 です。

購買担当者はこれらの見積を並べ、数値を比較します。しかしその数値は比較できません。

四件のデータシートの実際の記載

供給元名は伏せています。数値は原資料の記載どおりです。

供給元 材料 物性 記載値 単位 試験方法
A PET シート 引張降伏強さ 496 kgf/cm² ASTM D638
A PET シート 引張破断強さ 281 kgf/cm² ASTM D638
B HDPE 樹脂 引張降伏強さ 27 MPa ASTM D638
C PS(黒色導電) 引張降伏強さ 21.6 MPa ISO 527
C PS(黒色導電) 引張破断強さ 18.9 MPa ISO 527
D HIPS 導電シート 降伏強さ MD/TD 20.3 / 21.5 MPa JIS K7127-1989

二つの TDS を比較する前の三つの問い

1. 単位は同じか

1 kgf/cm² ≈ 0.0981 MPa により、496 kgf/cm² は約 48.6 MPa です。496 と記載した供給元が 27 と記載した供給元より 18 倍強いわけではありません。単位の違いであって、性能の違いではありません。

2. 試験方法は同じか

ASTM D638 と ISO 527 では試験片も試験速度も異なります。同一材料でも異なる数値が出ます。JIS のフィルム試験はそのどちらでもありません。

3. その数値はそもそもありえる値か

当社が保有するある TDS では、衝撃強さが ASTM D256 に基づき MPa で記載されていました。ASTM D256 は J/m で結果を報告する試験です。単位がありえない場合は、その紙面の他の記載もすべて疑ってください。

購買担当者が供給元に確認すべきこと

  • 同じ物性を、同じ試験方法で、同じ単位で報告してもらう
  • できれば 御社の 仕様に基づいて試験してもらう
  • 数値に違和感がある場合は、供給元を順位付けする前に、その値がどの資料に由来するかを確認する

エンジニアリングノート

対策はメール一通で済みます。試験方法を伴わない数値は、単なる数値です。

Good packaging should be practical, not just presentable.

材料TDS引張強さASTM D638ISO 527JIS K7127単位換算材料選定
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